症状が軽くても
注意が必要な靭帯損傷
膝靭帯損傷は、膝関節の安定を維持する役割を持つ「膝靭帯」が損傷（完全断裂・部分断裂・伸びる等）した状態です。注意が必要なのは、必ずしも症状が強く現れるとは限らないという点です。
膝を打ったり、ひねったりした後、少しでも違和感があるようでしたら、念のために受診してください。
膝関節の4つの靱帯
膝関節には、計4つの靭帯があります。
前十字靱帯（ACL）
膝の中央にあり、次にご紹介する後十字靭帯と交差しています。
脛骨が前方へとずれるのを防いだり、膝が捻じれるのを防ぐ役割を担っています。
後十字靱帯（PCL）
膝の中央で、前十字靭帯と交差しています。
脛骨が後方へとずれるのを防いだり、膝が捻じれるのを防ぐ役割を担っています。
内側側副靱帯損傷（MCL）
膝の内側にある靭帯です。
主に、膝が内側へと崩れるのを防ぐ役割を担っています。
外側側副靱帯損傷（LCL）
膝の外側にある靭帯です。
主に、膝が外側へと崩れるのを防ぐ役割を担っています。
膝靭帯損傷の原因は？
膝靭帯損傷の原因として多いのが、スポーツ中の接触プレーや転倒、交通事故などによって発生する、膝への急激な負荷です。
日常生活においても、階段からの落下、転倒などで、膝靭帯損傷を負うことがあります。
また靭帯は、日ごろの小さな負荷や加齢によって徐々に弱くなっているため、年齢を重ねている人ほど、軽い衝撃でも損傷しやすくなります。
膝靭帯損傷の症状
痛みや腫れといった症状は、必ずしも強く現れるとは限りません。
以下の気になる症状がございましたら、お早めに当院までご相談ください。
- 膝の痛み、腫れ
- 膝の不安定性
- 膝の曲げ伸ばしの困難、動かしづらい
- 歩行障害
- 階段の上り下りの際の膝の違和感
- 膝に水がたまる
膝靭帯損傷の検査
問診・診察では、膝の痛みが生じたきっかけや状況、不安定感の有無などの症状について確認し、あわせてスポーツ歴、受傷時の状況、既往歴なども詳しくお伺いします。
その上で、レントゲン検査やMRI検査などの画像検査を行い、診断します。CT検査が必要になることもあります。
膝靭帯損傷の治療方法・
早く治すには？
応急処置としては、RICE処置が重要になります。
RICE処置とは、Rest（痛みの出る姿勢や動作を避け、安静にする）、Ice（氷嚢などを患部に15～20分ほど当てる）、Compression（包帯・サポーターで患部を適度に圧迫する）、Elevation（患部を心臓より高い位置に上げる）を指します。可能な範囲で行い、その後受診してください。
保存療法
サポーター、ギプスなどで固定します。また急性期であれば、アイシングを行います。
痛みが落ち着いてからは、筋力・可動域を維持・回復させるため、リハビリテーションを行います。
再生医療(PRP療法)
患者様の少量の血液から抽出したPRP（多血小板血漿）を、患部へと注射し、損傷した組織の再生を促します。血小板には組織の修復や炎症の抑制を促す成分が含まれており、PRPを注入することで、靭帯の自然治癒力を高め、回復を早める効果が期待されます。軽〜中等度の損傷に対して効果的で、アスリートの早期復帰などにも用いられる治療法です。
手術療法
靭帯が完全に断裂している場合や、関節の不安定性が強く、日常生活やスポーツへの復帰が困難な場合には手術療法が検討されます。通常、靭帯再建術が行われます。手術が必要になった場合には、速やかに提携する病院をご紹介します。
膝靭帯損傷の治療期間は
どのぐらい？
軽度であればRICE処置・リハビリテーションなどの保存療法によって、治療期間は1ヶ月ほどで済みます。
中等度の場合も保存療法で対応可能ですが、治療期間は1～3ヶ月ほど必要になります。
完全断裂したような重度の場合には、3～6ヶ月、あるいはそれ以上の治療期間を要します。特に手術を行った場合、リハビリテーション期間を含めると治療期間が長くなります。